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胃がん

胃について

胃周辺の内臓食道から飲食物が送り込まれる袋状の組織で、入り口は噴門部、中心は胃体部、十二指腸とつながる出口は幽門部と呼ばれます。噴門は胃の内容物が食道に逆流するのを防ぎ、幽門は消化された内容物を十二指腸に送り込む量を調整しています。胃壁は、最も内側の粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜という層をなしています。胃の近くにある血管周辺には、リンパ球が集まるリンパ節があります。
胃は、胃液や消化酵素といった消化液を食物と混ぜて少しずつ十二指腸に送り出しています。またこの消化液は口から入ってきた細菌やウイルスなどの殺菌・不活化という役割も担っています。こうした強力な消化液があっても胃粘膜が消化されないのは、粘液によって粘膜が守られ、修復されているからです。

胃がんとは

胃粘膜の細胞ががん化して、それが増殖して発生します。がんが大きくなると、粘膜下層やその下の層にも広がっていきます。進行すると胃壁の外側まで達して周囲の臓器などに広がる浸潤を起こします。
また、がん細胞が血液やリンパ液の流れに乗って離れた臓器で増殖する転移を起こすこともあります。
スキルス胃がんは、胃粘膜の表面ではなく、胃壁を硬く・厚くさせながら広がっていきます。胃カメラ検査(内視鏡検査)でも早期発見が難しく、進行してから発見されるケースが多いため、治りにくいとされています。
胃がんは昔から日本人に多く、治療や予防に関する研究が進んでいて、早期発見できれば治せる可能性の高いがんです。将来の健康を守るためにも、胃がんリスクが上昇する40歳を超えたら、症状がなくても胃カメラ検査を受けることをお勧めします。

胃がんの症状

初期には自覚症状を起こすことがほとんどなく、深刻な状態まで進行しても自覚症状に乏しいケースもあります。また、胃がん固有の症状が特になく、胃炎など幅広い消化器疾患と症状が共通しています。胃がんによる症状でも市販薬で解消できることも多く、市販薬に頼って進行させてしまうこともあります。

下記の症状に気付いたら、できるだけ早く消化器内科を受診してください。

  • 胃やみぞおちの痛み・不快感・違和感
  • 胸やけ
  • 吐き気
  • 食欲不振
  • 貧血(めまい、頻脈など)
  • 黒いタール便
  • つかえ感
  • 体重減少

胃がんの原因

ピロリ菌ピロリ菌感染による慢性的な胃粘膜の炎症、喫煙が胃がん発生のリスク要因です。胃炎が慢性化して進行し、萎縮性胃炎になってしまうと胃がん発生リスクが上昇します。ピロリ菌感染陽性の場合、除菌治療に成功することで炎症や潰瘍などの再発を効果的に防ぐことができるため、胃がんリスクも抑えることができます。ただし、除菌に成功してもリスクがゼロにはなりません。また、食塩の過剰摂取も胃がん発症のリスクを高めることが指摘されています。

ピロリ菌について

胃がんの検査

問診で症状などについて伺った上で、胃がんの確定診断が可能な検査を行います。
胃がんであることがわかった場合には、進行度を調べる検査を行って治療方針決定に役立てます。


胃がんを確定するための検査

胃カメラ検査胃カメラ検査(胃内視鏡検査)では、胃粘膜の細部までを詳細に確認できます。また、組織を採取して病理検査を行うことで確定診断が可能です。造影剤を使った上部消化管X線検査では微細ながんの発見が難しく、組織採取ができないため確定診断のために別途、胃カメラ検査を受ける必要があります。
当院では、初期の無症状で微細な胃がんの発見に有効なNBIを搭載した高度な内視鏡システムを導入しています。NBIでは特殊光によって毛細血管の分布をクリアに観察できるため、毛細血管を周囲に集める特徴を持ったがんの発見に有効です。経験豊富な専門医がNBIなどの高度な機能を活用することで、平坦で表面の変化に乏しい初期の胃がん発見も可能になります。



進行度を確かめ、治療方針を決める検査

胃カメラ検査(胃内視鏡検査)で採取した組織の病理検査を行うことで、がん細胞の有無とがん細胞の種類などがわかります。
胃がんと確定診断されたら、さらに精密な検査を行ってがんの及んでいる深さを確かめ、周辺への浸潤、リンパ節・他の臓器への転移などの有無を調べて、その結果をもとに治療方針を決めます。
治療方針を決めるための検査には、CT検査、MRI検査、PET検査、超音波検査、超音波内視鏡検査などがあります。

胃がんの治療

内視鏡による切除と外科手術が主に行われています。
切除が不可能な場合や再発などで症状のコントロールが必要な場合には、全身化学療法が行われることもあります。

早期胃がん

侵襲が少なく回復が早い内視鏡による切除が主に行われています。従来の内視鏡的粘膜切除(EMR)に加え、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が登場したことで一括切除が可能な病変のサイズが大きくなっています。
ただし内視鏡による切除を行って、回収した組織の病理検査の結果、深い浸潤やリンパ節・血管にがんが入り込んでいるなどがわかった場合には、追加手術が必要になります。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

  • これまでよりも大きな病変の一括切除が可能
  • 切除した組織の病理検査を行うことができる
  • EMRでは不可能だった潰瘍瘢痕のある病変の切除も可能なケースが増えた
  • EMRに比べると切除に時間がかかり、出血や穿孔という合併症のリスクも比較的高い
  • 高度な技術が必要で熟練した専門医でなければ困難

上記のような特徴があるため、それを踏まえて慎重に治療法を選択することが重要です。

進行胃がん

進行がんは手術治療が第一選択となります。胃の2/3ほど切除する幽門側胃切除術、胃をすべて切除する胃全摘術、胃の上部を切除する噴門部切除術、一部分のみを切除する胃部分切除など、状態に合わせて手術法が変わります。こうした手術は現在、侵襲が少ない腹腔鏡による手術も可能になってきています。ただし、周囲の臓器への浸潤が認められる場合などには開腹手術が必要になります。

文責:佐久間 大 院長 【日本消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化器病専門医・指導医、日本肝臓専門医、日本内科総合内科専門医 など】

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